最近では、IT専門誌だけでなく、一般誌でも「クラウド」という単語を頻繁に見かけるぐらいに言葉が浸透してきました。そして、中小企業において
も、クラウドを経営・業務に活用する企業が増えてきています。しかし、大企業と中小企業では、労働生産性、従業員一人当たりの売上・利益率、IT習熟度な
ど、経営環境、状況に大きな違いがあります。大企業と同じようなクラウドサービスを使い、導入するだけでは、クラウドへの投資効果を高めることは出来ませ
ん。そこで、中小企業がクラウド導入で成功する3つのポイントをご説明いたします。
1.投資効果を明確にする
クラウドのメリットは、大きなシステムを多くのユーザーでシェアをする共同利用型のシステムサービスですが、利用者側はその恩恵として、非常に使い勝手の良い安定したシステムを安価な料金で利用することが出来ると言う点にあります。
確かに、クラウドサービスというのは、課金体系も1ユーザー単位で、利用期間も月単位や時間単位など、料金が細分化されており、単価自体は非常に小
額です。一見すると安いという錯覚に陥りがちですが、きちんと投資効果を含めて考えてみると、中小企業にとっては、決して安い金額ではないものも多くある
のも事実です。
例えば、ある顧客管理サービスを提供するクラウドサービスは、一人あたり月に15,000円の利用料金です。一見すると、これは安いように思われま
すが、このシステムを利用するユーザーが、社内に30名いるとすれば、月額450,000円となります。1年間使い続けたとすれば、5,400,000円
の投資となります。
クラウドサービスの利用料金はリースと違い、利用開始から何年経過しても、料金が下がることはありませんので、同額の利用料金を未来永劫、払い続け
ることになるのです。また、導入後に利用料金が値上げをされても、多くの自社データがそのクラウドサービスの中に入ってしまっており、従業員も使い方に慣
れてしまっているので、中々、他のクラウドサービスに移行することも容易ではありません。
このクラウドサービスを利用することによって、利用料金以上の効果を出すことが出来れば良いのですが、一般的に大企業と比べて生産性が30パーセン
ト程度低いと言われている中小企業にとって、1人あたり月額15,000円以上の労働生産性向上を行うことが、どれだけ難しいか、経営者は考えなければな
りません。
そこで、クラウドサービスを導入する際は、そのクラウドサービスの導入することによる、業務効率向上などの予想効果を数値化し、その効果と利用料金のギャップ、つまり、投資効果を評価した上で、導入を判断する必要があります。
つまり、クラウドサービスの導入前に投資効果を計ることが、中小企業にとってクラウドサービスの導入が成功するかどうかの分かれ目になっているのです。
そして、投資効果を導入前に詳細に検討することによって、そのクラウドサービスの必要性、機能、対象利用者、導入後の活用計画などを担当責任者が検
討することになり、結果的に派手に宣伝されているクラウドサービスに知名度だけで飛び付いたり、クラウドサービスの価格のトリックに惑わされること無く、
経営的にも効果のあるクラウドサービスを真剣に選び、その後の活用プランまで考えることが出来るのです。