「一般化したWeb会議システムで起こっている破壊的イノベーション」
日本クラウドコンピューティング株式会社
代表執行役 ITコンサルタント
清水 圭一
ICTの世界では、すでに一般化、陳腐化したような製品やサービスであっても、ある日突然、ローエンド型破壊的なイノベーションによって、特定の製品やサービスが大きなシェアを奪うことがあります。
この破壊的イノベーションとは、米ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・M・クリステンセン教授が提唱したイノベーションモデルの一つです。
既存製品の秩序を壊して、その業界構造を劇的に変化させるイノベーションを指します。
この破壊的イノベーションは新たな技術革新によって、既存製品よりも低機能、低価格、小型化、使い勝手の高さを実現させます。
その中でも、ローエンド型破壊的イノベーションは、低価格・簡便性を実現できる革新的技術を投入し、既存市場のローエンド層を獲得した上で、徐々にミドルレンジ・ハイエンド層のシェアを奪っていくイノベーションモデルを指します。
例として、iPadも発売当初は今まであったパソコンの機能をWeb閲覧とメールの送受信などの主要機能が誰でも直感的に、快適に使えるようにしたところから市場に投入し、今ではタブレットという新たな市場を作り上げ、パソコンの出荷台数を上回るまでになりました。
今回、取り上げるウェブ会議システムは登場から20年以上が経過し、どちらかと言うと、ユーザーの必要な機能は満たされ、一般化してしまっている分野でありました。
しかしながら、そのウェブ会議システムに破壊的イノベーションを持ち込み、今年の後半から始まる携帯電話の5Gのサービスや、働き方改革にも後押しされ、注目されているウェブ会議システムがあります。
今回は、ウェブ会議システムで、現在、注目されている「Zoom」について説明していきたいと思います。
ウェブ会議の参加者は1クリックで会議に参加できる
今までの多くのウェブ会議システムは参加者全員のID取得が必須でした。
例えばSkypeの場合も、事前にSkype IDを取得して、お互いにそれを知らせてから会議を始める形態が一般的でした。
しかしながら、Zoomズームは、会議の主催者さえIDを持っていれば、参加者は必ずしもIDを持っていなくても参加ができます。
そして、ウェブ会議の開始方法も簡単で、会議の主催者が指定のURLを参加者に知らせ、そのURLを参加者はクリックするだけで会議につながることができます。
また、必要なソフトウェア等は自動的にダウンロードされますので、ICTのリテラシーが高くない方々にとっても、あるいは、日常的にウェブ会議システムを使わないような方々にも、非常に優しいシステムとなっています。
ウェブ会議システムの接続が安定している
ウェブ会議システムは、社内の高速回線のもとで使えば、安定しているシステムなのですが、これが外出先などで使う場合、接続が不安定であったり、動画や音声に遅延が出るなど問題がありました。
また、画面共有機能なども、表示が遅延したりと、快適に使うには若干難がある場合が多くありました。
しかしながら、Zoomの場合、外出先で4G回線やLTE回線でも、接続が安定しており、動画や音声の遅延なども少ないのです。
既存のウェブ会議システムで遅延が出てしまう最大の原因は、アプリケーションに様々な機能を搭載しすぎて、アプリケーションそのものの動きが遅くなってしまうのが大きな原因となっていました。
Zoomは、ある程度、機能を主要なものに絞り、クラウド上で処理をすることや、動画や音声の圧縮技術により、モバイル回線でも使えるような工夫が取り入れられています。
ウェプ会議の録画、録音機能がある
1クリックで、ウェブ会議の録画、録音機能が実装されています。
例えば、会議に参加できなかった方に、その録画を見てもらったりすることが可能です。
また、音声録音も可能ですので、音声認識用ソフトウェアなどを併用すればテキスト化も簡単にできます。
それ以外にも、パソコン画面共有やホワイトボード、スマートフォン画面の共有など、ウェブ会議として必要な機能は備わっておりますので、今までのウェブ会議と比べても、遜色なく使うことができます。
会議の参加者を、さらに分けて分科会ができる
実際の会議や、研修等では、会議の参加者の役割やグループを分けて、個別に話してもらう、あるいは議論してもらうことがよくあります。
Zoomにはブレイクアウトルーム機能があり、特定の参加者だけのグループを別に作り、そちらで個別の会議をしてもらうようなこともできます。
リモートコントロール機能が実装
パソコンのサポート業務や、使い方などを相手に教える場合、相手のパソコンを遠隔でコントロールできる機能も搭載されています。
この機能を使うことにより、各営業所や拠点に入るICTのサポートスタッフを本社に一元化したり、あるいは在宅勤務の従業員のパソコンのサポートなども実施することが可能です。
働き方改革により、在宅勤務やテレワークの機会が増えているかと思います。
このZoomに限らず、ICTの世界では、今まで高額で採用が見送りになっていたシステムも、2-3年経ってみたら、安価に導入できるようになっていることがよくあります。
これを機会に、ウェブ会議システムの導入や見直しも検討してみてはいかがでしょうか?
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