「新入社員研修で行うべきICTコミュニケーションマナー」
日本クラウドコンピューティング株式会社
代表執行役 ITコンサルタント
清水 圭一
ICTコミュニケーションマナーの常識、非常識
新年度を直前に控え、新卒新入社員の受け入れ準備などで忙しい時期になってきました。
新入社員を受け入れる際に、多くの企業では、挨拶に始まり、名刺の渡し方、社内報告の仕方などのビジネスマナーをはじめとした新入社員研修を行います。
しかしながら、ICTに関する研修は実施している会社は少なく、やっていたとしても、Word、Excelの使い方、グループウェアや社内システムの使い方などの研修がほとんです。
しかしながら、ビジネスの現場では、電子メールを使ったコミュニケーションが主体になっている現状であるにも関わらず、ICTコミュニケーションに関するマナー研修は、実施していない会社が多いのが現状です。
今回は、特に新卒新入社員向けに行うべきICTコミュニケーションマナーの研修を行う際の重要ポイントを解説していきたいと思います。
ビジネスメールのマナー
to, cc, bccの使い方から始まり、適切なメールサブジェクトの書き方、本文の書き出し、相手に伝わるメールの表現方法、お取引先や社内宛のメールの違いや書き方、返信方法やタイミング、また、メール、ショートメッセージ、電話の使い分けなど、私たちが当たり前に行っていることも、新卒新入社員からすれば、今までに経験のないことです。
総務省が2018年7月27日に情報通信政策研究所の調査結果として発表した。
「平成29年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によれば、20代のソーシャルメディアに関わる時間は1日あたり109.8分となっており、メールの時間の70.7分を大幅に超えている状況で、過去3年間の統計からも、ソーシャルメディアによるコミュニケーションが伸び続けています。
このことからも、20代の若者のコミュニケーションは、代表的なソーシャルメディアであるLINE、Facebook、Twitter、Instagramなどのダイレクトメッセージ中心であり、電子メールは使い慣れてないことを前提に対応する必要があります。
また、仕事の社内や取引先とのメールのやり取りでも、プライベートで友人に送るような絵文字や若者言葉、略語を多用したりとビジネスにはふさわしくない不躾なメールなども多く見られます。
ここ数年のICTによるコミニケーション方法の変化は、年齢の離れていない世代間であっても大きなギャップがあります。
我々が当たり前と思っている常識も、新卒新入社員にとっては非常識となっている場合があり、基本から研修する必要があるのです。
具体的な研修内容としては、下記を網羅するように組み立てると良いでしょう。
(1)電子メールの書き方、添付ファイルの送り方
(2)電子メールの危険とセキュリティリスク
(3)取引先へのメールと社内メールの使い分け
ソーシャルメディアのマナー
LINE、Facebook、Twitter、Instagramに代表されるソーシャルメディアは、既に私たちの日常に溶け込んでいますが、新たに社会人となる新卒新入社員の方々の中には、今までの学生生活をソーシャルメディアにアップロードしているような感覚で、仕事の内容や愚痴などをソーシャルメディアにあげたり、時には大炎上するケースが多く見受けられます。
特に個人情報漏洩による炎上の場合、企業側も個人情報保護法に基づいた監督責任があるため、法的責任が追及されます。
また、例え個人的なことであっても、その内容が差別的発言や反社会的な内容により炎上した場合、従業員教育の欠如やコンプライアンス違反など企業は社会的責任を追及されるのです。
例え個人的な利用であっても社会人としてふさわしいソーシャルメディアでの振る舞いを教育する必要があります。
具体的な研修内容としては、下記を網羅するように組み立てると良いでしょう。
(1)自社のソーシャルメディア方針
(2)反社会的発言、差別的な発言、第三者の権利保護
(3)顧客・取引先・自社の機密保持義務
ICT機器利用に関するマナー
私たちの身の回りにこれだけスマートフォンを代表するようなICT機器が増えてくると、その利用方法についても新入社員に改めて、説明する必要があります。
例えば、会議中にはスマートフォンやタブレットをいじらないとか、仕事中にスマートフォンで音楽を聴きながら仕事をしない。
また、自社や取引先の機密に関すること、社内、顧客オフィスでのスマートフォンのカメラ撮影は承諾を得てから行う、個人のパソコン、スマートフォン、タブレットで業務を行わないなど、ICT機器の利用方法や規則、マナーについてしっかりと教える必要があります。
具体的な研修内容としては、下記を網羅するように組み立てると良いでしょう。
(1)ICT機器利用に関する情報セキュリティーリスクと対応
(2)ICT機器利用のマナー
(3)個人所有のICT機器利用の自社ガイドライン説明
上記のような研修を中心に行うだけでなく、最終的には受講者である新入社員の意識向上と牽制をする必要があります。
研修実施と共に、ICTの利用に関する誓約書に署名、捺印をして提出してもらったり、従業員のソーシャルメディア発言を企業側が監視するなど、複合的に対策していくことも必要になります。
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